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北海道教育大学教育学部札幌校理科教育講座化学教室

物理化学研究室 講義シラバス


化学の基礎 (教養科目) 前期(二単位)

 普段は意識していないかもしれませんが、私達の身の周りは“化学”であふれ ています。例えば、私達が自動車で移動できるのは、エンジン中でのガソリンの 燃焼反応によって、化学結合中に蓄えられている化学エネルギーを熱エネルギー 経由で力学エネルギーに変換しているからです。洗濯で衣服がきれいになるの は、界面活性剤によって汚れの成分を衣服から除去できるからです。女性が使う UVカット化粧品は、その中のUVカット剤(芳香族化合物)が紫外線を吸収し肌の 身代わりになってシミを防いでくれています。このように、到る処で私達は“化学”の恩恵を受けています。
 一方、化学を知らないが為に、命の危険にさらされる事もあります。例えば、 毎年必ずと言ってよいほど、ワゴン車内等の密閉空間の中で炭を燃して暖をとっ ているうちに一酸化炭素(CO)中毒死するという事故が起きています。また最近で は、化学を悪用して、劇毒物によって他人の命を脅かすような犯罪も起きていま す。化学は、使い方によっては“両刃の剣”的性格を持つのも事実です。
 この授業の目的は、私達の身の周りの化学を正しく理解する事にあります。 化学は断片的な事柄を暗記するもの」という誤った考えから脱却し、体系的に 「なぜそうなるのか」という説明ができ、「化学は面白い」と思えるようになる 事を目指します。講議で扱う題材は、皆さんの興味が持てそうな生活に関わりが 深い内容を選びました。また、演示実験を適宜取り入れる予定です。授業は、高 等学校で既に化学を学んでいる非理科系の学生がついてくることができるレベル で進めます。

講義内容

  1. 物質を構成する原子の内部構造と化学結合
  2. 光と物質の色
  3. 空気の化学と地球環境の化学
  4. 生活における燃焼
  5. 我々の身近にある水の性質

教科書:田中春彦著 環境と人にやさしい化学 培風館 1494円

成績評価

 毎回、授業の終わりにまとめの課題を課しその提出をもって出席とみなしま す。これとは別に期末に筆記試験を行います。出席7割以上、且つ期末試験で5 割以上の得点を得た者に単位を認定します。私語等により授業の進行を妨げ、他 の学生の迷惑になる者は受講を認めません。

物理化学 I 二年目前期(二単位) 物理化学 Iの授業のサイトへ

 この講義では,将来,皆さんが小・中・高等学校の理科教員になって物理分野や化学分野で教える内容に関して,“本当に理解している”状態になり,「教えることに事欠かない」状態までみなさん自身で自らの学力を引き上げてもらいます。

 この講義の最終目標は、化学平衡を熱力学的観点から理解することです。幾つかの段階を経て、この目標に近づいていきます。

 まずはじめに、次元や単位についての理解が科学的・定量的考察にとって極めて重要な役割を果たしていることを解説します。“数値x単位”ではじめて物理量となるのですから、式中の各物理量には必ず単位をつけた形にする事を強調しています。次に、物理化学を学ぶ上で避けて通ることが出来ない数学の基礎(微分・偏微分・定積分)を復習します。一般に、学生のみなさんは、微積分の演算テクニックは使えても微分・積分の「意味」を意外と理解していません。この現実をふまえつつ、微分・積分の「意味」「本質」を重視します(高等学校での数学の学習がほとんどものになっていない学生が多いことは、「危機的」といってもよい状況です)。
 これら数学的準備が終えたら、気体分子運動論を用いて気体の圧力について統計力学的に考察します。又、熱力学で頻繁に用いられる「可逆過程(変化)」「準静的過程(変化)」「不可逆過程(変化)」「自発的過程(変化)」「最大仕事」といった用語について考察を加えこれらの言葉を適切に用いることが出来るようにします。

 以上で身につけた基礎学力をもとに、熱力学第一法則(エネルギー保存則)および第二法則について学びます。ここでは、大きく分けて二つの事を出来るようにします。

 一つは、熱容量の考え方を基礎として、様々な物質の持つエネルギーの“番付”を求める方法を学びます。この番付は、標準状態(1atm)にある単体のエンタルピーを0にとり、この単体から目的物質を標準状態(定圧下)で生成する際の反応熱、すなわちエンタルピー変化量として表します。このエネルギー番付を用いて色々な反応の反応熱を求めたり、更に応用として、反応熱の温度変化を求める事ができるようになってもらいます。

 第一法則の理解の後、二つ目として、全ての変化が準静的過程で進行するCarnot engineのサイクルの検討から出発して、変化の自発性(=不可逆性)の尺度となるエントロピーという熱力学基本状態量の導入をおこないます。この熱力学状態量が、種々の条件下(準静的等温膨張・準静的断熱膨張・準静的等温圧縮・準静的断熱圧縮・不可逆等温膨張・・・・etc.)での理想気体の体積変化に伴ってどう変化するかを検討し、その結果、変化が自発的に進行する場合(=不可逆過程)は系と外界とのエントロピーの和は必ず増大し、準静的過程(=可逆過程=平衡状態)しか含まない場合は、これらの和は変化しないという結論を導き出します。

 これで、最終目標の一歩手前まで来ました。すなわち、エントロピーという状態量導入の結果、変化が自発的におこる条件や平衡の条件を検討することが可能になりました。しかしながら、エントロピーを用いて平衡を検討するには系と外界両方のエントロピー変化について検討しなければなりません。これでは、化学系での変化の方向を考察するには不便です。そこで、系について調べるだけで外界を同時に考慮できる状態量であるギブス自由エネルギーを導出し、この自由エネルギーを用いて化学平衡を考察します。

 講義の終わりには毎回演習問題を出し添削を行うことで、個人指導も行っています。評価は、最終試験の結果に出席を考慮して行います。試験には「付け焼き刃」的な勉強では解けないような(しかし基本的な)問題を出しています。「暗記」ではなく「理解した」ものだけに単位を認定しています。

講義内容

  1. 単位(次元)と有効数字
  2. 熱力学を学ぶ上での数学的準備(微分と積分の復習)
  3. 温度とは何か・気体の圧力(気体分子運動論)
  4. 可逆過程と不可逆過程
  5. エネルギー保存則(熱力学第一法則)
  6. 気体の容積変化に伴う仕事
  7. 熱機関の効率(カルノーサイクル)
  8. エントロピー(熱力学第二法則)
  9. ヘルムホルツ自由エネルギーとギブス自由エネルギー

物理化学 II 二年目後期(二単位)  物理化学 IIの授業のサイトへ

 物理化学(二)では物理化学(一)で扱った内容をさらに発展させます。

 まず、物質1mol当たりのギブス自由エネルギーに相当する化学ポテンシャルを用いて化学平衡についての考察をします。この応用として、液体の蒸発熱と圧力・温度の関係式である Clapeyron-Clausius 式を導出します。次に、平衡定数とギブス自由エネルギー変化の関係を導出し、平衡定数の温度変化について考察へと進みます。

 この、ギブス自由エネルギーを用いて、平衡電気化学系の考察へと発展させます。まず、電気化学系の考察に入る前に、電解質溶液中の化学種(イオン)の挙動の理想性からのずれについて考察し、「実効濃度」としての活量(=活量係数x濃度)を導入します。その後、ダニエル電池のような可逆電池の起電力について解説し、電極電位と化学種濃度の関係を表すNernst式を導出します。ここで、皆さん自身が高等学校で学んだ「金属のイオン化傾向」は、標準電極電位をその値の大きさに従って並べたものであることに他ならないことが理解できるはずです。さらに、電気化学的方法を用いているpH測定の原理についても解説します。

 講義後半では、電解質溶液中のイオンによる電気伝導について考察します。又、ある平衡状態から別の新たな別の平衡状態に到達する“速度”について扱う化学反応速度論について講義し、反応速度定数や活性化エネルギーの決定方法について学びます。

 物理化学(一)同様、講義の終わりには毎回演習問題を出し、個人指導も行っています。評価は、最終試験の結果に出席を考慮して行います。

講義内容

  1. エントロピーの統計力学的観点からの考察
  2. 化学ポテンシャル
  3. Clapeyron-Clausius式による水のモル蒸発熱の決定
  4. 化学平衡
  5. 理想性からのずれ -濃度から活量へ-
  6. 電気化学
  7. 電解質溶液論
  8. 反応速度論

物理化学演習 三年目通年(二単位)

 物理化学(一)(二)では、主に、巨視的観点から物質の物理化学的性質を学んできたが、時間の都合上、微視的観点からの問題にはほとんど立ち入れませんでした。ところで、20世紀に入ってから、いわゆる“古典力学”は原子・分子レベルでは破綻していることが明らかにされ、これを解決すべく“量子力学”が誕生しました。これにより、原子分子の構造・エネルギー状態・原子価・結合エネルギー・物質が呈する色など化学に関する多くの問題が解決されています。この授業では、講義および問題演習により微視的観点からの物質の物理化学的性質を理解することを目的とします。電子の粒子-波動の二重性の問題から出発し、原子分子の(電子)構造、分子の振動-回転のエネルギー量子化問題にまで話を進める予定です。
 形式は、講義・問題演習・実験と色々な形をとっています。

講義内容

  1. 原子分子レベルでの古典力学の崩壊
  2. 波動と粒子(ド・ブロイの物質波)
  3. 不確定性原理
  4. Bohrの水素原子モデル
  5. シュレディンガー方程式(一次元の箱の中の粒子)
  6. 水素原子の波動関数
  7. 分子軌道法による水素分子イオンの電子のエネルギー状態
  8. 分子の回転・振動

化学特講 III 四年目前期(二単位)

 化学特講IIIでは、主に、物理化学・電気化学の基本に関する欧文文献の輪読を行い、内容を各自学生が説明します。ここで特に指導していることは、英文は(日本語の文法に従って)後ろから訳しあげていくのではなく、文頭から順に文末に向かって理解していくという事です。また、英文の意訳は避け、徹底的に“論理”を貫徹する読みをすることを実践しています。この様にして初めて、内容を正確に理解できると確信しています。

化学特論IV 大学院前期(二単位)

 本授業では、化学熱力学の基礎を修得していることを前提として、電気化学の研究に必要な基礎理論について学びます。扱う内容、電極電位・電気二重層の構造・電極反応速度などです。さらに、以上の基礎理論をもとに実際の電気化学測定法についても概説します。

化学特別演習IV 大学院後期(二単位)

 化学特論で学んだ内容を基礎にして、電極表面科学関連の文献購読を行い研究の実際例について解説します。ここでは、日本語の論文だけではなく英語論文についても逐語訳しながら読解力を養います。さらに、学生が各自読んだ文献の要約を発表させることでプレゼンテーションの方法についても身につけさせます。


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